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【もうだめかもしれない。】世界一美しいカバンを作る。ep9

橋本荘一朗
初めて挑戦する『ものづくり』の挑戦記事のep9です。今回はカバンです。世界で最も美しいカバンを作るという目標をかかげています。
僕が作ったものを世界中の人が手にするって、まさにドリーム。今回はアルミの表面処理と革加工です。
ものづくりの経験がまったくない僕が、いろんな問題にぶち当たっては乗り越えて次へ進む記事です。
※このシリーズの記事は通常の記事文章と違い、『非常に口が悪い』ですので悪しからず。
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さて、革工房では大崎さんがサンプルを作ってくれることになり、大きな一歩を進むことができた。

さて、大島さんがサンプルを作ってくれているこの間にもやることがたくさんある。

 

今思えばこの2ヶ月間は恐ろしいほどのスピードでいろいろなことをしていた。

そうでもしないと、サンプルが間に合わず、出展費用を含めた展示会の費用、約200万円が無駄になってしまう。

まずは、細かい部品だが、大事な「ヒンジ」。

日本名「蝶番」。

鞄のフタとケースをつなぎ合わせて、それを軸に開閉するものだ。

一般的にはヒンジは種類も多く、そんなに苦労はしないと思いがちだが。。

以前、ゼロハリバートンの鞄を持ち歩いていた時があった。

当時の僕は、広告の仕事をしていたので、鞄の中は常に書類でパンパンだった。

ある日電車に乗っている時に、何かの拍子でラッチが外れ、鞄のフタが下に180度開いた。

 

その瞬間、鞄の荷物はまるでスローモーションのように、すべて車内に広がった。

 

エロ本が入っていなくて、ほんとに良かった。(普段エロ本を持ち歩くやつなんているんかーい)

万が一にも、こんなことがあってはいけないので、通常使われるヒンジではなく、特殊なヒンジを採用する必要がある。

ふと、机の引き出しにカルティエのボールペンが入っていた赤いケースがあることを思い出した。

これは宝石箱と同じような開閉感で、少し力を入れてフタを開けると一気に開き、

少し力を入れてフタを閉めると一気に閉まる。

どうなってんだ?

と思い、バラします。

バラしてわかったことは、コの字型のバネがヒンジについているだけ。

ただ、これだと、開けるか閉めるのどちらかになる。

 

特殊なヒンジ。

 

特殊なヒンジ。

 

そう、トルク(抵抗力)のあるフリーヒンジだ。

 

これはどういうことかというと、

フタを任意の位置で留めることが出来るというスグレモノである。

例えば鞄を左手にもって、右手でフタを開けて中のものを取ろうとしたとき、

普通であれば、フタは180度勝手に開いてしまうため、一度鞄を机の上に置く必要がある。

しかし、フリーヒンジを使えば、任意の位置でフタを留めることが出来るため、立ったままで、フタを好きな位置で止められるため、中の荷物が溢れる心配がない。

些細な事でも、実はとても重要なことなのだ。

で、こちらを採用。スガツネ製です。

 

さて、次はアルミフレームの二次処理である。

 

一般的にはアルミは削りっぱなしでほっておくと、酸化して、だんだん白っぽくなってくる。

また、それだけではなく、本来柔らかい金属のため、表面に傷が付きやすい。

そこで、一般的にはアルマイト処理という二次処理をおこなう。アルマイトを施すとアルミの表面が強くなるのだ。

アルミフレームの肌に関して、僕には1つのイメージが合った

 

AppleのMac Bookである。

 

金属製のユニボディ(一体型ボディ)でありながら、決して冷たいイメージがなく、逆にどことなく

愛らしい手触りだ。

基本的に素材が同じなので、出来るはず。・・・・だと思う。

早速Google先生に

「アルマイト処理 関東」で検索してみる。

これは幾つかヒットする。

その中で、比較的東京に近い工場に電話連絡をし、アルミフレームを持参し見積をもらうことにした。

依頼する作業内容は、

①まず切削したばかりのアルミフレームに、細かな砂を吹き当てて表面を少し粗す。これはサンドブラストという処理(梨地処理とも言う)で、
あえて目に見えない傷を付けることによって、傷を付けにくくする効果がある。

②そのブラスト処理をしたものに、アルマイト処理をする。アルマイト処理は特殊な液体が入った水槽にアルミ素材を一定の時間漬け込むと、その処理が完成する。

見積の結果、多摩川の土手沿いにある工場にお願いすることになった。

工場長は北斗の拳に出てくる雑魚キャラのボスのような出で立ちなのだが、人は良い。

そこで、砂の大きさ、アルマイト処理の色など、幾つかの組合せを試して、ようやく納得の行く処理が出来上がった。

ほぼ一緒(笑)

 

そして、もう一種類、今まで誰もやっていない鞄の表面処理がある。

それを是非やってみたい。

 

と、その前に、

そろそろ革の表面のサンプルが出来ているかもしれない。

大崎さんに携帯でショートメールを送る。

「明日あたり、行っても大丈夫ですか?」

「午後だったら、大丈夫っすよぉ!」

ひゃっほー

もうゴールはすぐそこだ!

 

いやぁ、ほんとに長かった。

ここまで怒涛の10ヶ月。

イラストを書いても、図面が無いと断られ、

図面を書いても工場に出来ないと断られ、

アルミに革は貼れないと断られ。

ある種のいじめにも近い状況だったかもしれない。

 

いやぁ、ほんとに長かった(涙)

うぅ

 

踊る心をなんとか押さえて、工房の前に車をとめ、勢い良くドアを閉め、

工房の扉を開け大崎さんの背中に声を掛ける。

橋本荘一朗
お疲れ様でーす!(笑顔)
大崎さん
おつかれーっす(笑顔)

 

橋本荘一朗
いろいろと、無理言ってすみません! それで上手く出来ました?(笑顔)

 

大崎さん
ちょっと仕事が立て込んでて、まだ手を付けてないんっすよ。すんませーん(笑顔)

 

橋本荘一朗
えっ

ぶっ倒れそうになりながら、

全身の毛という毛が逆だって、白髪になったような気持ちになった。

 

小川直也に何発ものSTOを受けたくらいの衝撃だった。

僕の視線の先には、数日前に送った鞄の型紙の封筒が封も切られずにそこに置いてあった。

 

もうダメかもしれない

今度こそ、もうダメかもしれない。

もう二月中旬。

展示会用パンフに入れる鞄の撮影も含めると、どんなに遅くても3月の中旬までにすべてのサンプルを仕上げないといけない。

 

もうダメだ。

もうダメだ。

人生で初めて、フリーズした。

続けてどうぞ!

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